朝起きたときや指を動かしたときに「カクン」と指が引っかかる、そんな経験はありませんか?その痛みや不快感は、もしかしたら「ばね指」かもしれません。この記事では、ばね指で指が引っかかる原因やメカニズムを分かりやすく解説し、今日からご自身で実践できる効果的なストレッチやマッサージ、日常生活での工夫など、具体的な改善策をご紹介します。また、専門家によるアプローチや再発を防ぐための予防策まで網羅していますので、つらいばね指の症状を和らげ、快適な日常を取り戻すためのヒントが見つかります。
1. ばね指とは?指が引っかかるメカニズムと症状
「指が曲がったまま伸びない」「無理に伸ばそうとするとカクッと引っかかる」「指の付け根に痛みがある」このような症状に心当たりはありませんか。それはもしかすると、ばね指かもしれません。ばね指は、指の腱と腱鞘に炎症が起こることで生じる症状で、日常生活に大きな影響を与えることがあります。この章では、ばね指がどのような状態なのか、なぜ指が引っかかってしまうのか、その基本的な症状とメカニズムについて詳しく解説いたします。
1.1 ばね指(弾発指)の基本的な症状と特徴
ばね指は、正式には「弾発指(だんぱつし)」とも呼ばれる、指の腱鞘炎の一種です。特に、指を曲げ伸ばしする際に、スムーズに動かせず、途中で引っかかったり、痛みを感じたりするのが主な特徴です。症状が進行すると、指が曲がったままの状態から自力で伸ばせなくなり、反対の手で伸ばすことで初めてカクンと弾けるように伸びる「ロッキング現象」が見られるようになります。
ばね指は、特定の指に起こりやすい傾向があります。特に親指、中指、薬指に多く見られますが、どの指にも発生する可能性があります。また、朝方に症状が強く現れることも特徴の一つです。起床時に指のこわばりや引っかかりを感じ、しばらく指を動かしていると徐々に症状が和らぐことが多いです。
具体的な症状を以下にまとめました。
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| 指の引っかかり | 指を曲げ伸ばす際に、途中で動きが止まったり、スムーズに動かせなくなったりします。 |
| 痛み | 指の付け根(手のひら側)に痛みが生じます。特に指を動かす際に強くなることがあります。 |
| 弾発現象(ロッキング) | 指が曲がった状態から、まるでバネのようにカクンと急に伸びる現象です。無理に伸ばそうとすると痛みを伴います。 |
| 指の付け根のしこり | 指の付け根の関節部分、手のひら側に小さな硬いしこりのようなものが触れることがあります。 |
| こわばり | 特に朝方に指がこわばり、動かしにくいと感じることがあります。 |
1.2 指が引っかかるのはなぜ?ばね指の発生メカニズム
指が引っかかる現象は、指を動かす際に重要な役割を果たす「腱(けん)」と「腱鞘(けんしょう)」という組織の間に問題が生じることで起こります。
私たちの指は、腕から伸びる筋肉につながる腱によって曲げ伸ばしされています。この腱は、骨に沿ってスムーズに動くように、トンネルのような「腱鞘」の中を通っています。腱鞘は、腱が骨から浮き上がらないように押さえつけ、摩擦を減らす役割を担っています。
ばね指は、指の使いすぎや繰り返しの動作などにより、この腱と腱鞘が炎症を起こすことで発症します。炎症が起こると、まず腱鞘が腫れて厚くなり、トンネルの内腔が狭くなります。さらに、腱自体も炎症によって肥厚したり、部分的にコブのような「結節(けっせつ)」ができたりすることがあります。
このように、狭くなった腱鞘のトンネルを、厚くなった腱や結節が無理に通過しようとする際に、「引っかかり」が生じます。特に指を曲げる際には腱が腱鞘の中に入り込みますが、伸ばそうとする際に、肥厚した腱や結節が狭い腱鞘の入り口でつかえてしまい、スムーズに動かせなくなります。この状態が、ばね指特有の引っかかりや痛み、そして「ロッキング現象」として現れるメカニズムです。
2. ばね指で指が引っかかる主な原因
ばね指の症状は、指の使いすぎだけでなく、体の変化や特定の病気が原因となることがあります。ここでは、指が引っかかる主な原因について詳しく見ていきましょう。
2.1 指の使いすぎや過度な負担
ばね指の最も一般的な原因の一つは、指や手首を酷使することによる腱鞘への過度な負担です。指の曲げ伸ばしをスムーズに行うためには、腱が腱鞘というトンネルの中を滑らかに通過する必要があります。しかし、この腱と腱鞘に摩擦や圧迫が繰り返されると、炎症が起こり、組織が厚くなってしまいます。
炎症によって腱鞘が狭くなったり、腱の一部が肥厚したりすると、腱が腱鞘の中をスムーズに通過できなくなり、指の引っかかりや痛みが生じるのです。特に、同じ指を繰り返し使う動作や、指に強い力を加える作業が多い方に多く見られます。
以下に、指の使いすぎにつながりやすい活動の例を挙げます。
| 活動の種類 | 具体的な動作例 |
|---|---|
| 職業による負担 | パソコンのキーボード入力、マウス操作、調理師の包丁さばき、美容師のハサミ使用、工場での細かな作業、農作業など |
| 趣味やスポーツ | ゴルフ、テニス、野球、楽器演奏(ピアノ、ギターなど)、裁縫、編み物、ガーデニング、スマートフォンやゲームの長時間操作など |
| 日常生活での習慣 | 重いものを持つ、洗濯物を絞る、雑巾を絞る、赤ちゃんの抱っこや授乳など |
これらの活動を頻繁に行う方は、指や手首に負担がかかっていないか、日頃から意識することが大切です。
2.2 加齢やホルモンバランスの変化
ばね指は、加齢に伴う体の変化や、ホルモンバランスの変動も深く関係しています。特に女性に多く見られる傾向があります。
2.2.1 加齢による影響
年齢を重ねると、体の組織は徐々に変化します。腱や腱鞘も例外ではありません。腱鞘の柔軟性が低下したり、組織が硬くなったりすることで、腱がスムーズに動くための環境が損なわれやすくなります。これにより、若い頃と同じような指の使い方でも、炎症や引っかかりが生じやすくなることがあります。
2.2.2 ホルモンバランスの変化
女性の場合、更年期や妊娠・出産期など、ホルモンバランスが大きく変動する時期にばね指を発症しやすくなることが知られています。
- 更年期: 女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少すると、腱や腱鞘の潤滑性が低下し、炎症が起こりやすくなると考えられています。
- 妊娠・出産期: この時期もホルモンバランスが大きく変化し、体内の水分貯留や腱鞘のむくみが生じやすくなります。また、出産後は赤ちゃんを抱っこする機会が増えるため、指への負担が増加することも一因となります。
このように、ホルモンの影響によって腱鞘がむくみやすくなったり、腱の滑りが悪くなったりすることで、ばね指の症状が現れやすくなるのです。
2.3 糖尿病や関節リウマチなどの関連疾患
特定の全身性の病気が、ばね指の発症リスクを高めることがあります。糖尿病や関節リウマチなどがその代表例です。
2.3.1 糖尿病
糖尿病の方は、血行不良や代謝異常が生じやすく、全身の組織に影響を及ぼすことがあります。腱や腱鞘の組織も例外ではなく、糖尿病によって腱の変性や腱鞘の肥厚が起こりやすくなると考えられています。これにより、腱が腱鞘内を滑らかに動けなくなり、ばね指の症状を引き起こすことがあります。糖尿病の合併症の一つとして、ばね指が発症することもあります。
2.3.2 関節リウマチ
関節リウマチは、自己免疫疾患の一つで、全身の関節に炎症を引き起こす病気です。指の関節もその対象となり、関節の炎症が腱や腱鞘にも波及することがあります。腱鞘に炎症が起こると、腱鞘炎となり、結果としてばね指の症状が現れることがあります。関節リウマチによる指の変形や機能障害と並行して、ばね指の症状に悩まされる方も少なくありません。
これらの疾患をお持ちの方は、ばね指の症状が出た際に、基礎疾患との関連も考慮に入れることが重要です。適切なケアを行うためにも、ご自身の体の状態を把握し、専門家にご相談ください。
3. 今日からできるばね指のセルフケアと改善策
ばね指の症状は、日々の生活の中で指に負担がかかることで悪化しやすいものです。しかし、適切なセルフケアを今日から実践することで、痛みの軽減や症状の改善を目指すことができます。ここでは、ご自宅で手軽にできる具体的な方法をご紹介いたします。
3.1 ばね指の痛みを和らげるストレッチ
指の腱やその周辺の組織を柔軟に保つことは、ばね指の症状緩和に非常に重要です。無理のない範囲で、ゆっくりと指や手首を動かすストレッチを取り入れましょう。
ストレッチを行う際は、痛みを感じる手前で止めること、反動をつけずにゆっくりと伸ばすことが大切です。各ストレッチを10秒から20秒程度キープし、数回繰り返してください。
| ストレッチの種類 | 目的と方法 |
|---|---|
| 指の付け根を伸ばすストレッチ | 手のひらを上に向けて、ばね指になっている指を反対側の手で優しく掴みます。その指の付け根から、ゆっくりと指を手の甲側に反らせるようにして伸ばします。指の付け根の腱が伸びていることを意識してください。 |
| 指を広げるストレッチ | 手のひらを広げ、それぞれの指の間に反対側の指を差し込むようにして、ゆっくりと指と指の間を広げます。指の付け根から指先まで、全体がじんわりと伸びる感覚を意識しましょう。 |
| 手首を反らす・曲げるストレッチ | 腕をまっすぐ前に伸ばし、手のひらを下に向けてください。反対側の手で、手の甲側から指先を掴み、ゆっくりと手首を下に曲げるようにして、手の甲側全体を伸ばします。次に手のひらを上に向けて、同じように指先を掴み、手首を上側に反らせて手のひら側全体を伸ばします。前腕の筋肉も一緒に伸ばすことで、指への負担軽減につながります。 |
| グー・パー運動 | 手のひらを広げた「パー」の状態から、ゆっくりと指を曲げて「グー」の形を作ります。この時、無理に力を入れず、指の関節がスムーズに動く範囲で行いましょう。これを数回繰り返すことで、指の関節の動きを滑らかに保ちます。 |
3.2 効果的なマッサージとツボ
指や手のひらのマッサージは、血行を促進し、腱鞘の炎症を和らげる効果が期待できます。また、特定のツボを刺激することで、ばね指の症状改善につながることもあります。
マッサージやツボ押しを行う際は、オイルやクリームを使用すると、肌への摩擦を減らし、より効果的に行えます。痛みを感じるほど強く押すのは避け、心地よいと感じる程度の強さで行いましょう。
3.2.1 ばね指に良いとされるマッサージ方法
- 指の付け根のマッサージ: ばね指になっている指の付け根の関節周辺を、親指の腹でゆっくりと円を描くように揉みほぐします。特に、引っかかりを感じる部分を重点的に、優しくマッサージしてください。
- 手のひらのマッサージ: 手のひら全体を、もう一方の親指でゆっくりと押しながら揉みほぐします。指の付け根から手首に向かって、筋に沿ってマッサージするのも効果的です。
- 前腕のマッサージ: 手首から肘にかけての前腕の筋肉を、もう一方の手で優しく揉みほぐします。指の動きは前腕の筋肉と深く関係しているため、ここをほぐすことも重要です。
3.2.2 ばね指に効果が期待できるツボ
| ツボの名前 | 場所 | 押し方 |
|---|---|---|
| 合谷(ごうこく) | 手の甲で、親指と人差し指の骨が交わるくぼんだ部分にあります。 | 反対側の親指で、骨に向かってゆっくりと押します。じんわりと響くような感覚があれば、適切に押せています。血行促進や痛みの緩和に効果が期待できます。 |
| 労宮(ろうきゅう) | 手のひらのほぼ中央にあり、手を軽く握った時に中指の先が当たる部分です。 | 反対側の親指で、ゆっくりと押します。心身のリラックス効果も期待でき、ストレスによる指の緊張緩和にもつながります。 |
| 魚際(ぎょさい) | 手のひらの親指の付け根のふくらみ(母指球)の中央、親指と手首の間のくぼんだ部分にあります。 | 親指の腹で、少し強めに押します。指の動きを滑らかにする効果が期待できます。 |
3.3 テーピングやサポーターでの保護
ばね指の症状が出ている間は、指を安静に保ち、過度な動きや負担から保護することが重要です。テーピングやサポーターを適切に利用することで、指への負担を軽減し、症状の悪化を防ぐことができます。
3.3.1 テーピングの活用
テーピングは、特定の指の動きを制限したり、関節をサポートしたりするのに役立ちます。伸縮性のあるテープや非伸縮性のテープを症状に合わせて使い分けます。
- 目的: 炎症を起こしている腱鞘や関節を固定し、指の曲げ伸ばしによる摩擦を減らします。
- 巻き方の一例:
- ばね指になっている指の付け根の関節を、軽く曲げた状態でテープの端を貼ります。
- 指の腹側から甲側へ、関節を包むようにテープを巻きつけます。この時、指の血行を妨げないよう、きつく巻きすぎないように注意してください。
- テープの端を指の付け根で固定します。指の曲げ伸ばしが制限され、引っかかりが軽減されることを確認してください。
3.3.2 サポーターの活用
市販されている指用や手首用のサポーターも、ばね指の保護に有効です。様々な種類がありますので、ご自身の指のサイズや症状に合ったものを選びましょう。
- 指用サポーター: ばね指になっている指全体を包み込み、保護します。寝ている間の無意識な指の動きを制限するのにも役立ちます。
- 手首用サポーター(親指サポート付き): 手首から親指の付け根にかけてサポートすることで、手全体の負担を軽減し、親指のばね指の症状緩和に役立つことがあります。
- 選ぶ際のポイント:
- フィット感: 指や手首にしっかりとフィットし、ずれにくいものを選びましょう。
- 素材: 通気性が良く、肌に優しい素材を選ぶと、長時間着用しても快適です。
- 着脱のしやすさ: 日常生活で頻繁に着脱する可能性を考慮し、簡単に装着できるものを選びましょう。
テーピングやサポーターは、あくまで補助的なものです。長時間の使用は避け、皮膚に異常がないか定期的に確認してください。かゆみや赤みが出た場合は使用を中止し、専門家にご相談ください。
3.4 日常生活で指への負担を減らす工夫
ばね指は、日々の指の使いすぎや負担が蓄積されることで発症・悪化することが多いです。日常生活の中で指への負担を意識的に減らす工夫をすることで、症状の改善や再発予防につながります。
3.4.1 作業中の工夫
- こまめな休憩: 同じ作業を長時間続けることは避け、1時間に一度は数分間の休憩を取り、指や手を休ませましょう。休憩中に軽いストレッチを行うのも効果的です。
- 作業姿勢の見直し: デスクワークなどでキーボードやマウスを使用する際は、手首が不自然に曲がらないよう、適切な高さに調整しましょう。手首の下にクッションなどを敷いてサポートするのも良い方法です。
- 道具の活用: 重いものを持つ、硬いものを開けるなどの際に、専用の道具や補助具を活用して、指への直接的な負担を減らしましょう。例えば、握力の必要な作業には、グリップの太い道具を選ぶと良いでしょう。
- 力の入れ方を意識する: 物を握る、押すなどの動作をする際、必要以上に力を入れすぎないように意識しましょう。全身を使って、指先だけでなく腕や肩の力も利用するイメージを持つと、指への負担が分散されます。
3.4.2 生活習慣の見直し
- 指の冷え対策: 指が冷えると血行が悪くなり、ばね指の症状が悪化することがあります。特に寒い季節には、手袋やハンドウォーマーなどを活用して、指を温かく保ちましょう。お風呂で温めるのも効果的です。
- バランスの取れた食事: 身体全体の健康は、指の健康にもつながります。炎症を抑える効果が期待できる栄養素(オメガ3脂肪酸など)を含む食品を積極的に摂り、バランスの取れた食事を心がけましょう。
- 十分な睡眠: 睡眠は、身体の回復に不可欠です。質の良い睡眠を十分に取ることで、指の炎症や疲労の回復を促し、症状の改善につながります。
- スマートフォンの使用頻度: スマートフォンを長時間使用する際は、持ち方や操作方法に注意し、親指への負担が集中しないようにしましょう。両手で操作したり、休憩を挟んだりする工夫が必要です。
これらの工夫を日常生活に取り入れることで、ばね指の症状を和らげ、快適な毎日を送るための一助となることを願っています。
4. 専門家によるばね指の治療法
ご自身でのセルフケアを続けても症状が改善しない場合や、痛みが強く日常生活に支障をきたす場合は、専門家による治療を検討することが大切です。専門家は、ばね指の状態を正確に把握し、適切な治療法を提案してくれます。
4.1 医療機関での診察と診断
専門的な治療を受けるためには、まず専門機関での診察と正確な診断が必要です。専門家は、問診、視診、触診を通じて、指のどの部分に炎症や引っかかりがあるのか、痛みの程度や発生状況などを詳しく確認します。
診断では、指を動かした際の引っかかりの有無や、腱鞘部分の圧痛、腫れなどを確認し、ばね指特有の症状を見極めます。 また、他の疾患の可能性がないかどうかも慎重に判断します。正確な診断によって、その後の治療方針が決定されます。
4.2 保存療法 薬物療法 注射など
ばね指の治療は、まず保存療法から開始されることが一般的です。保存療法には、薬物療法や注射療法、物理療法などがあります。
4.2.1 薬物療法
薬物療法では、炎症を抑えたり、痛みを和らげたりする目的で内服薬や外用薬が処方されます。
| 種類 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | 炎症と痛みの軽減 | 内服薬や湿布、塗り薬として使用されます。炎症反応を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。 |
| 鎮痛剤 | 痛みの緩和 | 痛みが強い場合に処方されることがあります。炎症を直接抑える効果は限定的です。 |
これらの薬は、症状の初期段階や、痛みが比較的軽度な場合に有効とされています。
4.2.2 注射療法
薬物療法で十分な効果が得られない場合や、痛みが強い場合に検討されるのが注射療法です。特に、ステロイド注射が広く用いられます。
ステロイド注射は、炎症が起きている腱鞘内に直接薬液を注入することで、強力に炎症を抑え、痛みを軽減する効果があります。注射後、数日から数週間で症状の改善が見られることが多いですが、効果の持続期間には個人差があります。また、繰り返しの注射は腱の脆弱化や皮膚の萎縮などのリスクがあるため、専門家と相談しながら慎重に実施されます。
4.2.3 物理療法
物理療法は、温熱療法や超音波療法、電気療法などを用いて、患部の血行促進や組織の柔軟性向上、痛みの緩和を図る治療法です。
- 温熱療法:患部を温めることで血行を促進し、筋肉や腱の緊張を和らげ、痛みを軽減します。
- 超音波療法:超音波の振動によって組織の深部に熱を発生させ、炎症の抑制や組織の修復を促します。
- 電気療法:低周波や干渉波などの電気刺激を患部に与えることで、痛みを和らげたり、筋肉の緊張を緩和したりします。
これらの物理療法は、他の保存療法と組み合わせて行われることが多く、症状の改善をサポートします。
4.3 手術療法とその選択肢
保存療法を数ヶ月続けても症状が改善しない場合や、引っかかりが強く指が全く動かせないなど、日常生活に大きな支障をきたしている場合には、手術療法が検討されます。
4.3.1 腱鞘切開術
ばね指の手術の主流は、腱鞘切開術(けんしょうせっかいじゅつ)です。この手術は、指の腱がスムーズに動けるように、肥厚して狭くなった腱鞘の一部を切開し、腱の通り道を広げることを目的とします。
手術は局所麻酔下で行われることが多く、比較的短時間で終了します。術後は、指の引っかかりが解消され、痛みが改善されることが期待できます。手術方法には、主に以下の2種類があります。
| 手術方法 | 特徴 | メリット・デメリット |
|---|---|---|
| 開放性腱鞘切開術 | 皮膚を数ミリ切開し、直視下で腱鞘を切開します。 | メリット:腱鞘を確実に確認しながら切開できるため、再発のリスクが低いとされます。 デメリット:小さな傷跡が残る可能性があります。 |
| 経皮的腱鞘切開術 | 皮膚を切開せず、特殊な針のような器具を挿入して、皮膚の上から腱鞘を切開します。 | メリット:傷跡がほとんど残らず、回復が早い傾向にあります。 デメリット:腱鞘の切開が不十分になる可能性や、神経損傷のリスクがわずかに高まる可能性があります。 |
どちらの手術方法を選択するかは、患者様の症状の程度や専門家の判断によって決定されます。手術後には、リハビリテーションが必要となる場合もあります。
5. ばね指の再発を防ぐ予防策
一度改善したばね指も、日頃の生活習慣や指の使い方によっては再発する可能性があります。ここでは、再発を防ぎ、指の健康を長く保つための予防策について詳しくご紹介します。
5.1 日常生活での指のケアと注意点
指への負担を減らすことが、ばね指の再発防止には不可欠です。日々の生活の中で、意識的に指をいたわる習慣をつけましょう。
5.1.1 指の使いすぎを防ぐ
特定の指に集中して負担がかかる動作は避けましょう。例えば、スマートフォンやパソコンの操作、家事、育児、手芸など、指を酷使する作業を行う際は、定期的に休憩を取り、指を休ませることが大切です。
同じ作業を長時間続ける場合は、作業内容を工夫したり、道具を見直したりすることも有効です。例えば、ペンを握る際は太めのものを選んだり、キーボード操作では指全体を使うように意識したりするなど、負担を分散させる工夫を凝らしましょう。
5.1.2 指を温める習慣を持つ
血行不良はばね指の悪化や再発につながることがあります。特に寒い季節や冷房の効いた場所では、指が冷えやすくなりますので、意識的に指を温めるように心がけましょう。
- 温かいお湯に手を浸す
- 温かいタオルで指を包む
- 手袋やハンドウォーマーを活用する
など、手軽にできる方法で血行を促進し、指の柔軟性を保つことが大切です。
5.1.3 正しい姿勢を保つ
意外に思われるかもしれませんが、全身の姿勢も指への負担に影響します。特にデスクワークなどで猫背になりがちな方は、肩や首の緊張が腕や手にも伝わり、指への負担を増やすことがあります。
背筋を伸ばし、肩の力を抜いて座ることを意識し、定期的に姿勢をリセットする時間を設けましょう。これにより、体全体のバランスが整い、指への負担軽減にもつながります。
5.2 定期的な運動と健康管理
指の健康だけでなく、体全体の健康状態もばね指の再発に大きく関わります。日頃から適度な運動と健康管理を心がけましょう。
5.2.1 指の柔軟性を保つストレッチ
前章でご紹介したストレッチを、症状がない時でも予防として継続することが重要です。特に、朝起きた時や作業の合間など、定期的に指をゆっくりと動かし、柔軟性を保つようにしましょう。
指の関節を一つずつ丁寧に曲げ伸ばししたり、手のひらを広げたり閉じたりする運動は、腱や腱鞘の滑りを良くし、引っかかりの予防に役立ちます。
5.2.2 全身の血行を促進する運動
指だけでなく、全身の血行を良くすることも大切です。ウォーキングや軽いジョギング、水泳など、無理のない範囲で全身運動を取り入れましょう。
血行が促進されることで、指の組織にも栄養が行き渡りやすくなり、回復力が高まります。また、適度な運動はストレスの軽減にもつながり、体全体の調子を整える効果も期待できます。
5.2.3 バランスの取れた食生活と十分な睡眠
健康な体は、健康な食生活と十分な睡眠から作られます。特に、炎症を抑える働きのある栄養素(例えば、ビタミンC、ビタミンE、オメガ3脂肪酸など)を意識して摂取しましょう。
また、質の良い睡眠は、体の修復機能を高め、疲労回復を促します。規則正しい生活リズムを心がけ、ストレスを溜めないようにすることも、ばね指の再発予防には欠かせません。
5.2.4 ストレス管理
ストレスは、自律神経の乱れを通じて、体の血行不良や筋肉の緊張を引き起こすことがあります。これが指への負担を増大させ、ばね指の再発につながる可能性も考えられます。
趣味の時間を持つ、リラックスできる環境を作る、深呼吸をするなど、自分に合ったストレス解消法を見つけ、積極的に取り入れましょう。
6. まとめ
ばね指は、指の引っかかりや痛みを伴う辛い症状ですが、その原因を理解し、適切な対処をすることで改善が期待できます。日々のセルフケアとして、ストレッチやマッサージ、テーピング、そして指に負担をかけない工夫は非常に有効です。しかし、症状が改善しない場合や悪化するようであれば、我慢せずに専門医の診察を受けることが大切です。早期の診断と治療は、症状の悪化を防ぎ、早期回復につながります。ご自身の指の状態と向き合い、適切なケアと予防を心がけましょう。何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。
