授乳中の腱鞘炎、そのつらい痛みに悩んでいませんか?赤ちゃんを抱っこするたび、授乳の姿勢をとるたびに手首や指にズキッと走る痛みは、ママにとって大きな負担です。この痛みは、単なる疲れだけが原因ではありません。実は、授乳期特有のホルモンバランスの変化や、育児による身体的な負担が深く関わっています。この記事では、なぜ授乳期の女性に腱鞘炎が多いのか、その根本的な原因から、あなたの症状がどのタイプの腱鞘炎なのかをセルフチェックで確認する方法まで、詳しく解説いたします。さらに、今日からすぐに実践できる痛みを和らげるセルフケア、サポーターや市販薬の活用法、そして根本的な改善を目指す専門家への相談のタイミングと治療法、再発を防ぐための予防策まで、あなたの疑問を全て解消できるよう網羅的にご紹介します。もう腱鞘炎の痛みに諦める必要はありません。正しい知識と適切なケアで、痛みを和らげ、笑顔で育児を続けられる未来を手に入れましょう。
1. 授乳中の腱鞘炎 なぜ起こる?その原因を徹底解説
授乳期の女性に多く見られる腱鞘炎は、単なる手の使いすぎだけが原因ではありません。身体的な負担と、妊娠・出産に伴うホルモンの変化が複雑に絡み合い、発症リスクを高めているのです。ここでは、授乳中の腱鞘炎がなぜ起こりやすいのか、その根本的な原因を詳しく解説いたします。
1.1 授乳期の女性に腱鞘炎が多い理由 ホルモンの影響
授乳期の女性が腱鞘炎になりやすい大きな要因の一つに、ホルモンの影響が挙げられます。特に、妊娠中から産後にかけて分泌される特定のホルモンが、腱や腱鞘の組織に影響を与え、炎症が起こりやすい状態を作り出しています。
具体的には、出産時に骨盤の関節を緩める作用を持つ「リラキシン」というホルモンが、産後もしばらく体内に残存します。このリラキシンは、全身の関節や腱、靭帯を緩める作用があるため、腱鞘も通常より伸びやすく、炎症を起こしやすい状態になっています。
また、「プロゲステロン」というホルモンも関係していると考えられています。プロゲステロンは体内の水分貯留を促す作用があり、これがむくみを引き起こすことがあります。腱鞘内に水分が溜まりむくむことで、腱と腱鞘の摩擦が増え、結果として炎症が生じやすくなるのです。これらのホルモンの作用が、育児による身体的負担と重なることで、腱鞘炎の発症リスクがさらに高まります。
1.2 腱鞘炎を引き起こす主な身体的負担
ホルモンの影響に加え、授乳期特有の身体的負担も腱鞘炎の大きな原因となります。赤ちゃんの抱っこや授乳姿勢、そして育児中の手の酷使が、腱や腱鞘に過度なストレスを与え、炎症を引き起こすのです。
1.2.1 赤ちゃんの抱っこや授乳姿勢
赤ちゃんを抱っこする動作は、腱鞘炎の大きな原因の一つです。特に、赤ちゃんの頭を支えるために親指を酷使したり、片腕で長時間抱っこしたりすることで、手首や指に不自然な力がかかります。
授乳中も同様に、長時間同じ姿勢を続けることが多く、手首を曲げて赤ちゃんを支えたり、指で乳房を支えたりする動作が、腱鞘に負担をかけます。特に親指の付け根や手首に負担が集中しやすく、腱と腱鞘の摩擦が繰り返されることで炎症につながります。
| 動作の種類 | 腱鞘への影響 |
|---|---|
| 赤ちゃんの抱っこ | 親指の酷使、手首の不自然な角度、片腕への集中した負担 |
| 授乳姿勢 | 手首を曲げての赤ちゃん支え、長時間同じ姿勢の維持、指での乳房支え |
| 抱っこひもの調整 | 手首や指を使った細かい作業、繰り返し行われることで負担蓄積 |
| チャイルドシートの乗せ降ろし | 赤ちゃんの体重を支える際の手首への強い負荷 |
これらの動作は、一見すると軽いものに思えますが、毎日何十回と繰り返されることで、腱鞘に少しずつダメージが蓄積されていくのです。
1.2.2 育児中の手の酷使
授乳期は、抱っこや授乳以外にも、手や指を酷使する場面が非常に多くあります。おむつ交換、着替え、沐浴、離乳食の準備、洗濯、掃除など、育児中の日常生活動作のほとんどが手を使う作業です。
これらの動作は、細かい指の動きを伴うことが多く、また休憩を挟むことなく長時間にわたって行われることが少なくありません。特に、赤ちゃんを片手で支えながら何かをする、という場面も多く、片方の手や指に大きな負担が集中しやすくなります。
例えば、おむつを替える際に赤ちゃんを固定するために手首や親指を使ったり、離乳食を準備する際に包丁を握ったり、哺乳瓶を洗ったりする動作も、腱鞘に負担をかけます。スマートフォンを長時間操作する際も、親指を多用するため、腱鞘炎のリスクを高める要因となります。
このように、育児中の日常生活動作が、知らず知らずのうちに手や指に大きな負担をかけ、腱や腱鞘に微細な損傷が蓄積することで、炎症を引き起こしやすくなるのです。
2. あなたの症状は?授乳中の腱鞘炎の種類とセルフチェック
授乳中の腱鞘炎には、いくつかの種類があります。ご自身の症状がどのタイプに当てはまるのかを知ることは、適切なケアを始める第一歩です。ここでは、特に授乳期の女性に多く見られる代表的な腱鞘炎の種類と、ご自宅でできる簡単なセルフチェックの方法をご紹介します。
2.1 手首の腱鞘炎 ドケルバン病
ドケルバン病は、親指を動かす2つの腱と、その腱が通るトンネル(腱鞘)に炎症が起きることで発症する腱鞘炎です。特に手首の親指側に強い痛みを感じることが特徴です。
授乳中の女性に多く見られるのは、赤ちゃんを抱っこする際に親指を広げた状態を維持したり、授乳中に赤ちゃんを支えるために手首や親指に負担がかかりやすいためです。哺乳瓶を握る、赤ちゃんの着替えやおむつ替えで細かい作業をする際にも、親指の酷使が原因となることがあります。
主な症状は以下の通りです。
| 症状の項目 | 特徴 |
|---|---|
| 痛みを感じる場所 | 親指の付け根から手首の親指側にかけて痛みます。 |
| 痛みの種類 | ズキズキとした痛みや、ジンジンとした鈍い痛みがあります。特に親指を動かしたり、手首をひねったりすると痛みが強くなります。 |
| 見た目の変化 | 患部に腫れや熱感が見られることがあります。 |
| 日常生活での影響 | 物を掴む、タオルを絞る、赤ちゃんの抱っこや授乳など、親指や手首を使う動作が困難になります。 |
2.2 指の腱鞘炎 ばね指
ばね指は、指を曲げ伸ばしする際に使う腱と、その腱が通る腱鞘が炎症を起こし、スムーズな動きが妨げられる状態です。特に指の付け根に痛みや引っかかりを感じることが特徴です。
授乳中の女性の場合、赤ちゃんを抱きかかえる、おむつを替える、着替えさせるなど、指を頻繁に曲げ伸ばしする動作や、強く握り込む動作が多いことで発症しやすくなります。特に、朝起きた時に指が伸びにくかったり、カクカクと引っかかったりする症状が多く見られます。
主な症状は以下の通りです。
| 症状の項目 | 特徴 |
|---|---|
| 痛みを感じる場所 | 指の付け根に痛みが集中します。特に親指、中指、薬指に多く見られます。 |
| 痛みの種類 | 指を曲げ伸ばしする際に、カクンと引っかかるような感覚とともに痛みが走ります。 |
| 見た目の変化 | 指の付け根に小さなコブのような腫れが見られたり、押すと痛むことがあります。 |
| 日常生活での影響 | 朝方に指が伸びにくく、無理に伸ばそうとすると痛みが強くなります。物を持つ、ボタンを留めるなどの細かい作業がしづらくなります。 |
2.3 自己診断のポイントと見分け方
ご自身の症状がどちらの腱鞘炎に近いのか、簡単なセルフチェックで確認してみましょう。ただし、これらのチェックはあくまで目安であり、自己判断だけでなく、症状が続く場合は専門の施術者にご相談ください。
| 腱鞘炎の種類 | セルフチェックの方法 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| ドケルバン病 | 1. 親指を他の4本の指で包み込むようにして、握りこぶしを作ります。 2. そのまま手首を小指側にゆっくりと曲げます。 | この動作をした際に、親指の付け根から手首の親指側にかけて強い痛みがあれば、ドケルバン病の可能性があります。 また、この部分を軽く押してみて、痛みが強くなるかどうかも確認しましょう。 |
| ばね指 | 1. 指をゆっくりと曲げ伸ばししてみます。 2. 特に朝起きた時や、指をしばらく使った後に試してみましょう。 | 特定の指の付け根で引っかかりやカクカクする感覚、または痛みが伴う場合は、ばね指の可能性があります。 指の付け根に腫れや熱感がないか、触って確認してみるのも良いでしょう。 |
これらのセルフチェックで症状が当てはまる場合や、痛みがひどくて日常生活に支障が出ている場合は、早めに専門の施術者にご相談することをおすすめします。
3. 今日からできる 授乳中の腱鞘炎 痛みを和らげる対処法
授乳中の腱鞘炎の痛みは、日常生活に大きな影響を与えます。しかし、日々のちょっとした工夫やセルフケアで、その痛みを和らげ、悪化を防ぐことができます。まずはご自身でできることから始めてみましょう。
3.1 まずは安静に 腱鞘炎の悪化を防ぐ
腱鞘炎の痛みを和らげるために最も大切なのは、痛む部位を安静に保つことです。痛みを感じる動作を無理に続けると、炎症が悪化し、回復が遅れる可能性があります。
- 痛む動作を避ける:赤ちゃんを抱っこする際や授乳の際に、特定の姿勢で痛みを感じる場合は、その動作をできるだけ避けるか、工夫して負担を減らしましょう。
- 無理をしない:家事や育児で手が離せない状況でも、少しでも痛みを感じたら無理をせず、休憩を取ることが大切です。パートナーや家族に協力を求めることも検討してください。
- 適度な休息:腱鞘炎の回復には休息が不可欠です。夜間の授乳で睡眠不足になりがちですが、昼間に赤ちゃんが寝ている間に一緒に休むなど、意識的に休息の時間を確保しましょう。
3.2 手軽にできるセルフケア ストレッチとマッサージ
安静に加えて、血行促進や筋肉の柔軟性を高めるためのストレッチやマッサージも効果的です。痛みを感じない範囲で、ゆっくりと行いましょう。
| ケアの種類 | 具体的な方法 | ポイント・注意点 |
|---|---|---|
| 手首のストレッチ | 1. 腕をまっすぐ前に伸ばし、手のひらを下向きにします。 2. もう一方の手で、伸ばした手の指先をゆっくりと手前に引き寄せます。手首がじんわりと伸びるのを感じましょう。 3. 次に、手のひらを上向きにし、同様に指先を下方向にゆっくりと引き寄せます。 | ・各15~20秒キープし、左右それぞれ2~3回繰り返します。 ・痛みを感じる手前で止めることが大切です。 |
| 指のストレッチ | 1. 指を一本ずつ、ゆっくりと反らせたり、曲げたりして、関節の柔軟性を高めます。 2. 軽く握りこぶしを作り、ゆっくりと開く動作を繰り返します。 | ・力を入れすぎず、指の付け根から丁寧に行います。 ・お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うとより効果的です。 |
| 前腕のマッサージ | 1. 痛む腕の前腕部分(肘から手首にかけて)を、もう一方の手の指で優しく揉みほぐします。 2. 特に、手首を動かすと張る部分や、硬くなっている部分を重点的に行います。 | ・強い力で押さず、気持ち良いと感じる程度の圧力で行います。 ・血行を促進するように、心臓に向かって(手首から肘へ)揉み上げるイメージです。 |
| 手のひらのマッサージ | 1. 親指の付け根にあるふくらみ(母指球)や、手のひらの中央部分を、もう一方の親指でゆっくりと押します。 2. 指の付け根(水かきの部分)も、軽く広げるようにマッサージします。 | ・凝り固まった筋肉をほぐすように、円を描くようにマッサージします。 ・オイルやクリームを使うと、摩擦が減り、よりスムーズに行えます。 |
3.3 サポーターやテーピングで腱鞘炎をサポート
手首や指に負担がかかる動作が多い場合、サポーターやテーピングを活用することで、腱鞘炎の悪化を防ぎ、痛みを軽減することができます。
3.3.1 サポーターの選び方と使い方
サポーターは、手首や指の動きを制限し、腱への負担を軽減する役割があります。保温効果も期待でき、血行促進にもつながります。
- 種類:手首全体を固定するタイプ、親指の付け根を重点的にサポートするドケルバン病対応タイプ、指の関節を固定するばね指対応タイプなどがあります。
- 選び方:ご自身の症状や痛む部位に合わせて選びましょう。締め付けすぎず、適度なフィット感があるものを選び、通気性の良い素材だと長時間着用しても快適です。ドラッグストアやベビー用品店などで購入できます。
- 使い方:特に痛みを感じやすい抱っこや授乳時、家事の際に着用すると効果的です。就寝時は外すなど、長時間連続での着用は避け、皮膚の状態にも注意しましょう。
3.3.2 テーピングの巻き方と注意点
テーピングは、サポーターよりも細かい部位をピンポイントで固定し、動きを制限するのに役立ちます。正しい巻き方をすることで、負担を軽減できます。
- 目的:腱鞘炎の痛む部位を固定し、腱の動きを制限することで、炎症の悪化を防ぎます。
- 巻き方の例(ドケルバン病の場合): 1. 手首の親指側から、親指の付け根を通り、手の甲側へ向かってテープを貼ります。 2. 手首を一周するように巻き、親指の動きを制限するように調整します。 3. 締め付けすぎないように注意し、指先の色や感覚に異常がないか確認しましょう。
- 注意点:皮膚が弱い方は、かぶれを防ぐために下巻きテープを使用するか、短時間での使用に留めましょう。自分で巻くのが難しい場合は、専門知識を持つ方に相談することをおすすめします。
3.4 市販薬や湿布の上手な使い方
一時的に痛みを和らげたい場合や、炎症が強いと感じる場合には、市販の湿布や塗り薬、内服薬を活用することも選択肢の一つです。ただし、授乳中の使用には注意が必要です。
3.4.1 湿布・塗り薬(外用薬)
湿布や塗り薬は、直接患部に作用し、炎症を抑えたり痛みを和らげたりする効果が期待できます。
- 成分:消炎鎮痛成分(フェルビナク、インドメタシンなど)が含まれているものが一般的です。
- 種類:冷感タイプは急性期の熱を持った痛み、温感タイプは慢性的なこりや血行不良による痛みに向いている場合があります。
- 使用上の注意: ・授乳中の使用については、必ず薬剤師に相談し、赤ちゃんへの影響がないか確認してください。 ・皮膚に異常(かゆみ、かぶれなど)が現れた場合は、すぐに使用を中止しましょう。 ・広範囲に貼ったり、長時間使用したりすることは避けましょう。
3.4.2 内服薬(飲み薬)
痛みが強く、外用薬だけでは不十分な場合には、市販の痛み止め(内服薬)も検討できます。しかし、母乳を通じて赤ちゃんに成分が移行する可能性があるため、特に慎重な判断が必要です。
- 成分:イブプロフェンやアセトアミノフェンなどが含まれる痛み止めが一般的です。
- 使用上の注意: ・授乳中の使用可否について、必ず薬剤師に相談してください。特に、市販薬でも成分によっては授乳中に避けるべきものもあります。 ・指示された用法・用量を守り、必要最低限の使用にとどめましょう。 ・内服薬は一時的な対処であり、根本的な治療ではないことを理解しておくことが大切です。
4. 専門医に相談 授乳中の腱鞘炎 根本的な治療法
セルフケアを続けても痛みが改善しない場合や、日常生活に支障が出るほどの強い痛みを感じる場合は、専門の医療機関を受診することをおすすめします。授乳中の腱鞘炎は、適切な診断と治療を受けることで、症状の緩和と早期回復が期待できます。
4.1 病院に行くタイミングと受診すべき科
ご自身の症状が改善しない、または悪化していると感じたときが、専門機関を訪れるタイミングです。特に、以下のような症状が見られる場合は、迷わず相談してください。
- セルフケアを続けても痛みが引かない、または強くなる場合
- 手首や指の動かしにくさが顕著になり、家事や育児に支障が出ている場合
- 安静にしていても痛みが続く場合
- しびれなどの神経症状を伴う場合
受診すべきは、手や関節の専門知識を持つ医療機関です。ご自身の症状を詳しく伝え、授乳中であることを必ず伝えてください。専門家があなたの状態を正確に評価し、最適な治療方針を提案してくれます。
4.2 専門機関での具体的な治療法
専門機関では、症状の程度や種類に応じて、様々な治療法が検討されます。授乳中であることを考慮し、あなたと赤ちゃんにとって安全で効果的な治療法が選択されます。
4.2.1 薬物療法と注射
痛みを和らげ、炎症を抑えるために、薬物療法が用いられることがあります。
主に、以下のような治療が考えられます。
| 治療法 | 内容 | 授乳中の注意点 |
|---|---|---|
| 内服薬 | 非ステロイド性消炎鎮痛剤などが処方されることがあります。炎症を抑え、痛みを和らげることを目的とします。 | 授乳への影響を考慮し、必ず専門家と相談し、安全な薬剤を選択してもらうことが重要です。 |
| 外用薬 | 湿布や塗り薬などの消炎鎮痛剤が用いられます。患部に直接作用させることで、全身への影響を抑えながら痛みを緩和します。 | 使用部位や量に注意し、赤ちゃんが触れる可能性のある場所への使用は避けるなどの指示に従ってください。 |
| 注射 | 腱鞘内にステロイド剤を注入する治療法です。強い炎症や痛みを抑える効果が期待できます。 | 効果が高い一方で、繰り返し行うと組織が弱くなる可能性もあります。また、授乳への影響についても専門家と十分に相談してください。 |
これらの薬物療法は、痛みの緩和に有効ですが、根本的な原因の改善には、生活習慣の見直しやセルフケアの継続も不可欠です。
4.2.2 手術という選択肢
保存的治療(薬物療法やセルフケアなど)を続けても症状が改善しない場合や、日常生活に著しい支障をきたす場合には、手術が検討されることもあります。
腱鞘炎の手術は、炎症を起こしている腱鞘の一部を切開し、腱の圧迫を取り除くことが主な目的です。これにより、腱の動きがスムーズになり、痛みが改善されることが期待できます。
手術は最終的な選択肢であり、専門家があなたの症状や生活状況、授乳の状況などを総合的に判断し、必要と判断した場合に提案されます。手術後の回復期間やリハビリテーションについても、事前に詳しく説明を受け、納得した上で決断することが大切です。
5. 授乳中の腱鞘炎 もう悩まないための予防と対策
授乳中の腱鞘炎は、適切な予防と対策で乗り越えることができます。日々の生活の中で少し意識を変えるだけで、手の負担を大きく減らし、痛みに悩まされない育児生活を送ることが可能です。ここでは、具体的な予防策と対策をご紹介いたします。
5.1 腱鞘炎になりにくい授乳姿勢と抱き方
授乳は毎日何度も行う動作ですので、その姿勢が腱鞘炎に大きく影響します。正しい姿勢を意識し、手首や指への負担を最小限に抑えることが重要です。
- クッションの活用
授乳クッションや座布団などを活用し、赤ちゃんの高さを調整してください。赤ちゃんが胸の高さに来るようにすると、腕だけで支える必要がなくなり、手首や指への負担が軽減されます。 - 体全体で支える
赤ちゃんを抱く際は、腕の力だけでなく、ママの体全体で支えるように意識しましょう。背中を壁や椅子の背もたれに預け、肘や腕だけでなく、太ももや膝、クッションなどを利用して赤ちゃんの体重を分散させてください。 - 肩の力を抜く
授乳中は、つい肩に力が入ってしまいがちです。肩の力を抜き、リラックスした状態で授乳できるよう、深呼吸をしたり、授乳前に軽く肩を回したりするのも良いでしょう。 - 様々な抱き方を試す
同じ抱き方ばかりだと、特定の部位に負担が集中してしまいます。フットボール抱きや横抱きなど、いくつかの抱き方を試して、ご自身と赤ちゃんにとって楽な姿勢を見つけてください。また、左右の腕を交互に使うことも大切です。
5.2 育児中の手の負担を減らす工夫
授乳時だけでなく、育児中のあらゆる場面で手や腕は酷使されています。日々の生活の中で、手の負担を減らすための工夫を取り入れることで、腱鞘炎の予防につながります。
| 育児シーン | 手の負担を減らす工夫 |
|---|---|
| 抱っこ | 抱っこ紐やベビーカーを積極的に活用し、長時間の抱っこを避けてください。赤ちゃんを抱き上げる際は、膝を曲げて腰から持ち上げるようにすると、腕への負担が減ります。 |
| おむつ替え・着替え | おむつ替え台や少し高めの台を利用し、かがむ姿勢を減らしましょう。赤ちゃんの体を持ち上げる際は、片方の腕だけでなく、両手を使ったり、足や膝をうまく使ったりしてください。 |
| 沐浴 | ベビーバスを高い位置に置けるスタンドなどを利用し、無理な姿勢にならないよう工夫してください。赤ちゃんを支える際は、滑りやすいので特に注意し、両手でしっかりと支えましょう。 |
| 家事全般 | 食器洗いには食洗機を、洗濯物干しには乾燥機付き洗濯機やハンガーを多めに使うなど、便利家電やグッズを積極的に活用してください。無理のない範囲で、家族に協力を求めることも大切です。 |
| 調理 | 離乳食作りなど、細かい作業が多い場合は、フードプロセッサーなどの調理器具を活用し、手の負担を減らしましょう。 |
家族やパートナーに積極的に協力をお願いすることも非常に重要です。一人で抱え込まず、できることは分担し、ママの休息時間を確保してください。
5.3 腱鞘炎予防に役立つ生活習慣の改善
腱鞘炎の予防には、日々の生活習慣の見直しも欠かせません。体の内側から健康を保つことで、腱鞘炎になりにくい体づくりを目指しましょう。
- 十分な休息と睡眠
育児中はまとまった睡眠が難しいこともありますが、できる限り休息をとり、睡眠時間を確保してください。体が疲れていると、腱や筋肉も疲労しやすくなり、腱鞘炎のリスクが高まります。赤ちゃんが寝ている間に、ママも横になるなど、短い時間でも休息をとることを心がけましょう。 - 体を冷やさない工夫
体が冷えると血行が悪くなり、腱鞘炎の悪化につながることがあります。特に手首や指先は冷えやすいので、サポーターや手袋、アームウォーマーなどを活用して温めるようにしてください。温かい飲み物を飲んだり、入浴で体を温めたりするのも効果的です。 - バランスの取れた食事
栄養バランスの取れた食事は、体の回復力を高め、腱や筋肉の健康維持に役立ちます。特に、タンパク質やビタミン、ミネラルを意識して摂取しましょう。無理なダイエットは避け、授乳に必要なエネルギーをしっかり補給してください。 - ストレス軽減
育児中のストレスは、体の緊張を高め、腱鞘炎の症状を悪化させる可能性があります。趣味の時間を作ったり、友人や家族と話したりするなど、自分なりのストレス解消法を見つけて実践してください。完璧を目指しすぎず、時には手を抜くことも大切です。 - 軽いストレッチや体操
手首や指、肩周りの軽いストレッチや体操を日課にすることで、血行を促進し、筋肉の柔軟性を保つことができます。ただし、痛みを感じる場合は無理せず中止してください。
6. まとめ
授乳中の腱鞘炎は、多くのお母さんが経験するつらい症状です。女性ホルモンの影響に加え、赤ちゃんを抱っこしたり授乳したりする際の無理な姿勢や、育児による手の酷使が主な原因となります。ドケルバン病やばね指など、症状にはいくつかの種類がありますが、ご自身の状態を正しく理解することが改善への第一歩です。
痛みを感じたら、まずは無理をせず安静にすることが大切です。ストレッチやマッサージといったセルフケア、サポーターや市販薬を上手に活用することで、痛みを和らげることができます。しかし、セルフケアだけでは改善しない場合や、痛みがひどい場合は、我慢せずに整形外科などの専門医を受診してください。適切な診断と治療を受けることで、症状の根本的な改善が期待できます。
また、腱鞘炎は予防が非常に重要です。授乳時の姿勢や抱き方を工夫したり、育児グッズを活用して手の負担を減らしたり、日々の生活習慣を見直したりすることで、腱鞘炎になりにくい体づくりを目指せます。
授乳期の腱鞘炎は、決して珍しいことではありません。一人で抱え込まず、原因を知り、適切な対処法と予防策を講じることで、つらい痛みを乗り越え、赤ちゃんとの大切な時間を笑顔で過ごせるようになります。
何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。
