五十肩による肩の痛みや腕の上げにくさに悩んでいませんか?この記事では、つらい五十肩の症状を和らげ、再びスムーズな腕の動きを取り戻すための効果的な筋トレの種類と、ご自宅で無理なく実践できるおすすめの方法を詳しくご紹介します。筋トレは、肩関節の安定性を高め、硬くなった筋肉や関節の柔軟性を取り戻すことで、五十肩の根本的な改善と再発予防に役立つことが期待できます。正しい知識と実践法を身につけ、快適な日常を取り戻しましょう。
1. 五十肩とは?症状と筋トレが効果的な理由
五十肩は、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれる症状で、多くの場合、40代から60代の方に発症しやすいことからその名がつけられました。肩関節の周囲にある腱や関節包、滑液包といった組織に炎症が起こり、痛みや肩の動きの制限を引き起こします。単なる加齢現象と捉えられがちですが、放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。しかし、適切なアプローチ、特に筋トレを取り入れることで、症状の改善や回復を早めることが期待できます。
1.1 五十肩の主な症状と進行段階
五十肩の症状は、その進行段階によって特徴が異なります。多くの場合、痛みから始まり、徐々に肩の動きが悪くなるという経過をたどります。ここでは、主な症状と典型的な進行段階について詳しくご説明いたします。
1.1.1 五十肩の主な症状
五十肩の痛みは、安静時だけでなく、腕を動かした時や夜間に強くなることが特徴です。特に、以下のような症状が見られます。
- 肩の痛み: 肩関節全体に鈍い痛みを感じることが多く、腕を上げたり、後ろに回したりする動作で痛みが強まります。
- 夜間痛: 寝ている時に肩の痛みで目が覚めることがあります。特定の寝姿勢で痛みが悪化することも少なくありません。
- 可動域の制限: 腕を真上に上げる、横に開く、後ろに回すといった動作が困難になります。例えば、服の着脱、髪をとかす、高い所の物を取る、車のシートベルトを締めるなどの日常動作に支障が出ます。
- 肩の凝りやだるさ: 肩関節周囲の筋肉が緊張し、凝りや重だるさを感じることがあります。
1.1.2 五十肩の進行段階
五十肩は一般的に、以下の3つの段階を経て回復に向かうとされています。それぞれの段階で症状の特徴と適切なケアが異なります。
段階 | 特徴的な症状 | この段階での状態 |
---|---|---|
急性期(炎症期) | 強い痛み、特に夜間痛や安静時痛が顕著です。肩の動きは非常に制限され、少し動かすだけでも激痛を伴うことがあります。 | 肩関節周囲の組織で炎症が活発に起こっている時期です。無理な運動は避け、炎症を抑えることが最優先されます。 |
慢性期(拘縮期) | 痛みは急性期に比べて落ち着きますが、肩の可動域の制限が顕著になります。肩が固まってしまい、腕が上がりにくくなる、後ろに手が回らないなどの状態が続きます。 | 炎症が収まり、関節包や周囲の組織が硬くなり、動きが悪くなっている時期です。この段階から、徐々に可動域を広げるための運動が重要になります。 |
回復期 | 痛みも可動域の制限も徐々に改善されていく時期です。しかし、完全に元の状態に戻るまでには時間がかかることがあります。 | 肩関節の柔軟性や筋力を回復させる時期です。再発予防のためにも、継続的なケアや筋トレが欠かせません。 |
これらの段階を理解し、ご自身の状態に合わせたケアを行うことが、五十肩の早期回復には不可欠です。
1.2 なぜ五十肩に筋トレが有効なのか
五十肩の症状があるときに「筋トレ」と聞くと、痛みが悪化するのではないかと不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、適切な種類の筋トレを正しい方法で行うことは、五十肩の症状改善や再発予防に非常に有効であることが知られています。その理由をいくつかご紹介いたします。
1.2.1 肩関節の安定性向上
肩関節は、人間の体の中で最も可動域の広い関節の一つです。その広い可動域を支えているのが、周囲の筋肉群です。特に、肩のインナーマッスルと呼ばれる深層の筋肉群(回旋筋腱板など)は、肩関節の安定性を保つ上で重要な役割を担っています。五十肩を発症すると、痛みによってこれらの筋肉がうまく使えなくなり、さらに弱化が進むことがあります。弱ったインナーマッスルを筋トレで強化することで、肩関節の安定性が向上し、痛みの軽減や可動域の改善に繋がります。
1.2.2 血行促進と組織の修復
筋トレを行うことで、肩関節周囲の血行が促進されます。血行が良くなると、炎症の原因となる物質が排出されやすくなり、新鮮な酸素や栄養素が供給されやすくなります。これにより、損傷した組織の修復が促され、回復を早める効果が期待できます。また、筋肉を動かすことで、関節包や周囲の軟部組織の柔軟性を保ち、硬くなる(拘縮)のを防ぐ効果もあります。
1.2.3 可動域の改善と痛みの軽減
五十肩の慢性期や回復期において、適切な筋トレは肩の可動域を徐々に広げるのに役立ちます。筋肉をバランス良く鍛え、柔軟性を高めることで、肩の動きがスムーズになり、日常生活での動作が楽になります。また、肩関節が安定し、正しい姿勢を保てるようになることで、肩にかかる不必要な負担が減り、結果として痛みの軽減にも繋がります。
1.2.4 再発予防と身体機能の維持
一度五十肩を経験すると、反対側の肩や同じ肩で再発するリスクも考えられます。筋トレによって肩関節周囲の筋肉を継続的に強化し、バランスを整えることは、五十肩の再発予防に非常に有効です。また、筋力を維持することで、加齢による筋力低下を防ぎ、長期的な身体機能の維持にも貢献します。
これらの理由から、五十肩の治療において筋トレは非常に重要な役割を担います。ただし、闇雲に行うのではなく、ご自身の症状や進行段階に合わせた適切な方法を選ぶことが大切です。次の章では、具体的な筋トレの種類と実践法について詳しくご紹介いたします。
2. 五十肩の筋トレを始める前に知るべきこと
五十肩の症状改善を目指して筋力トレーニングに取り組むことは非常に効果的ですが、その一方で、誤った方法や無理な負荷で行うと、かえって症状を悪化させてしまうリスクも潜んでいます。安全かつ効果的に筋トレを進めるためには、いくつかの重要なポイントを事前に理解し、実践することが不可欠です。この章では、五十肩の筋トレを始めるにあたって、知っておくべき基本的な注意点や、専門家への相談の目安について詳しく解説いたします。
2.1 筋トレを行う際の注意点と正しいフォームの重要性
五十肩の筋力トレーニングは、ただ闇雲に体を動かせば良いというものではありません。症状の進行度合いや個人の体調に合わせて、細心の注意を払いながら行うことが大切です。特に以下の点に留意し、安全に効果を実感できるトレーニングを目指しましょう。
2.1.1 痛みを伴う動作は避ける
五十肩の筋トレで最も重要なのは、「痛みを感じる動作は行わない」という原則です。痛みは体が発する危険信号であり、それを無視して無理にトレーニングを続けると、炎症を悪化させたり、新たな損傷を引き起こしたりする可能性があります。必ず痛みのない範囲で、ゆっくりと、慎重に動作を行うようにしてください。少しでも痛みを感じたら、すぐに中止し、無理をしないことが症状改善への近道となります。
2.1.2 ウォームアップとクールダウンを徹底する
筋トレを始める前には、必ずウォームアップを行いましょう。軽い体操やストレッチで肩周りの筋肉や関節を温め、血行を促進することで、怪我のリスクを減らし、トレーニング効果を高めることができます。同様に、筋トレ後にはクールダウンとして、使った筋肉をゆっくりと伸ばすストレッチを行うことが大切です。これにより、筋肉の疲労回復を促し、柔軟性を維持することができます。
2.1.3 正しいフォームを意識する
筋力トレーニングの効果を最大限に引き出し、同時に怪我のリスクを最小限に抑えるためには、正しいフォームで行うことが極めて重要です。自己流のフォームでは、目的とする筋肉に適切に負荷がかからず、効果が薄れるだけでなく、間違った部位に負担がかかり、新たな痛みを引き起こす原因となることがあります。鏡で自分の姿勢を確認したり、可能であれば専門家のアドバイスを受けたりしながら、一つ一つの動作を丁寧に行うように心がけてください。
2.1.4 負荷は徐々に増やし、無理をしない
五十肩の筋トレは、最初から高い負荷をかけるべきではありません。まずは軽い負荷から始め、徐々に回数やセット数を増やしていくのが基本です。大切なのは、筋肉を追い込むことではなく、安定した状態で正しいフォームを維持できる範囲で続けることです。筋肉痛がひどい場合や、疲労が残っている場合は、無理をせず休息を取り、体の回復を優先させましょう。
2.1.5 呼吸を意識して行う
筋トレ中の呼吸は、単に息をするだけでなく、動作と連動させることでパフォーマンス向上や怪我の予防につながります。一般的には、力を入れるときに息を吐き、力を抜くときに息を吸うのが基本です。呼吸を止めずに、深くゆっくりと行うことで、筋肉への酸素供給が促され、血圧の急激な上昇も防ぐことができます。
2.1.6 継続が力となる
筋力トレーニングは、短期間で劇的な効果が得られるものではありません。地道に、そして継続的に取り組むことで、徐々に肩周りの筋肉が強化され、可動域の改善や痛みの軽減につながります。焦らず、ご自身のペースで習慣化することが何よりも大切です。
以下に、筋トレを行う際の主な注意点をまとめました。
項目 | 注意点 | 理由 |
---|---|---|
痛み | 痛みを感じる動作は行わない | 炎症の悪化や新たな損傷を防ぐため |
準備運動 | ウォームアップとクールダウンを徹底する | 怪我の予防と筋肉の疲労回復を促すため |
フォーム | 正しいフォームで行うことを意識する | 効果の最大化と怪我のリスク軽減のため |
負荷 | 軽い負荷から始め、徐々に増やす | 無理な負担を避け、安定した継続を可能にするため |
呼吸 | 動作と連動させ、深くゆっくり行う | パフォーマンス向上と血圧管理のため |
継続 | 焦らず、ご自身のペースで習慣化する | 長期的な症状改善と再発予防のため |
2.2 専門家への相談の目安
五十肩の筋トレは自宅でも実践できますが、ご自身の判断だけで進めることに不安を感じる場合や、特定の症状が見られる場合には、専門家への相談を強くおすすめいたします。専門家の適切なアドバイスは、症状の悪化を防ぎ、より効果的な改善へと導くための重要な一歩となります。
2.2.1 どのような場合に専門家へ相談すべきか
以下のような状況に当てはまる場合は、自己判断で筋トレを続けるのではなく、体の状態を正確に評価してもらうためにも、専門知識を持つ方にご相談ください。
- 痛みが強い、または悪化している場合
筋トレを始めてから痛みが強くなった、または新たな痛みが出現した場合は、すぐに中止し、専門家にご相談ください。無理な継続は症状を長引かせる原因となります。 - 肩の可動域が著しく制限されている場合
腕を上げたり、後ろに回したりする動作が極端に困難で、日常生活に大きな支障をきたしている場合は、専門家による適切な評価と指導が必要です。 - 自己流の筋トレで改善が見られない、または悪化している場合
数週間から数ヶ月間、ご自身で筋トレを続けても症状の改善が見られない、あるいはかえって悪化していると感じる場合は、トレーニング方法が合っていない可能性があります。 - 不安や疑問がある場合
「この動きはしても大丈夫だろうか」「本当にこの方法で合っているのだろうか」といった不安や疑問がある場合は、遠慮なく専門家にご相談ください。心の不安を取り除くことも、改善への大切な要素です。 - 日常生活に支障をきたしている場合
着替えや洗髪、家事など、日常生活の基本的な動作にまで五十肩の症状が影響を及ぼしている場合は、専門家による包括的なサポートが必要となります。
2.2.2 専門家へ相談するメリット
専門家へ相談することには、多くのメリットがあります。ご自身の状態を正確に把握し、最適な改善策を見つけるためにも、積極的に活用しましょう。
メリット | 詳細 |
---|---|
正確な状態把握 | 肩の状態、痛みの原因、可動域の制限度合いなどを専門的な視点から評価し、五十肩の進行段階や個別の状態を正確に把握できます。 |
個別のアドバイス | ご自身の状態に合わせた、具体的な筋トレメニューやストレッチ方法、日常生活での注意点など、パーソナルなアドバイスを受けられます。 |
安全な進行 | 無理のない範囲で、安全に症状改善を目指すための指導を受けられます。誤った自己判断による症状悪化のリスクを軽減できます。 |
モチベーション維持 | 専門家からの励ましや、改善に向けた具体的な目標設定により、筋トレを継続するモチベーションを高く保つことができます。 |
早期回復の可能性 | 適切な時期に適切な介入を行うことで、五十肩の症状改善を早め、日常生活への復帰をスムーズにすることができます。 |
専門家は、あなたの体の状態を総合的に判断し、五十肩の症状を和らげ、機能回復を促すための最適なアプローチを提案してくれます。安心して筋トレに取り組むためにも、必要に応じて専門家の力を借りることをためらわないでください。
3. 五十肩におすすめの筋トレの種類と実践法
五十肩の症状を和らげ、肩の機能を回復させるためには、闇雲に肩を動かすのではなく、段階や痛みの程度に合わせた適切な筋トレを行うことが非常に大切です。ここでは、肩関節の安定性を高めるインナーマッスル、可動域を広げるアウターマッスル、そして全身の連動性を意識した体操まで、自宅で安全に実践できる具体的な方法を詳しくご紹介いたします。
筋トレは、痛みのない範囲で、ゆっくりと丁寧に行うことが基本です。無理をしてしまうと、かえって症状を悪化させる可能性もありますので、ご自身の体の声に耳を傾けながら、焦らずに取り組んでください。
3.1 インナーマッスルを鍛える五十肩筋トレ
肩関節の安定性を保つために重要なのが、回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる深層の筋肉群、すなわちインナーマッスルです。これらの筋肉は、上腕骨を肩甲骨に引きつけ、肩関節がスムーズに、かつ安定して動くようにサポートする役割を担っています。インナーマッスルを強化することで、肩関節のぐらつきが減り、痛みの軽減や可動域の改善に繋がります。
インナーマッスルは小さな筋肉群のため、高負荷で鍛えるのではなく、軽い負荷で正確なフォームを意識しながら行うことが肝心です。痛みを感じたらすぐに中止し、無理のない範囲で継続することが大切です。
3.1.1 チューブを使った回旋筋腱板エクササイズ
トレーニングチューブは、インナーマッスルに適切な負荷をかけやすく、自宅でも手軽に実践できる優れたアイテムです。特に、肩関節の外旋(腕を外側にひねる動き)や内旋(腕を内側にひねる動き)を鍛えるのに効果的です。軽い負荷のチューブから始め、徐々に慣らしていくようにしましょう。
エクササイズ1: チューブを使った外旋運動
この運動は、肩の外旋筋を鍛え、肩関節の安定性を高めることを目的としています。
- 準備: 軽い負荷のトレーニングチューブを用意します。ドアノブや柱など、安定した場所にチューブの片端を結びつけます。もう片端を、痛む側の手で持ちます。
- 姿勢: 結びつけた場所に対して横向きに立ち、チューブを持つ腕の肘を90度に曲げ、脇をしっかりと締めます。肘は体の横に固定し、動かさないように意識してください。
- 動作: チューブの張力を感じながら、ゆっくりと腕を外側に開いていきます。このとき、肘の位置を固定し、肩甲骨が動かないように意識することが重要です。肩に痛みを感じる手前で動きを止め、数秒間キープします。
- 戻し方: ゆっくりと元の位置に戻します。反動を使わず、チューブの張力に逆らうようにコントロールしながら戻しましょう。
- 回数: 10回を1セットとし、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 痛みを感じたらすぐに中止してください。無理に可動域を広げようとせず、痛みのない範囲で行うことが最も重要です。また、肩がすくまないように、リラックスして行いましょう。
エクササイズ2: チューブを使った内旋運動
この運動は、肩の内旋筋を鍛え、外旋筋とのバランスを整えることを目的としています。
- 準備: 外旋運動と同様に、チューブを安定した場所に結びつけます。今度は、結びつけた場所に対してチューブを持つ腕を内側にして立ちます。
- 姿勢: 肘を90度に曲げ、脇をしっかりと締めます。肘は体の横に固定し、動かさないように意識してください。
- 動作: チューブの張力を感じながら、ゆっくりと腕を体の内側に閉じるように動かします。肩甲骨が動かないように意識し、肘の位置を固定します。痛みを感じる手前で動きを止め、数秒間キープします。
- 戻し方: ゆっくりと元の位置に戻します。チューブの張力に逆らうように、コントロールしながら戻しましょう。
- 回数: 10回を1セットとし、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 肩がすくまないように注意し、肩甲骨の安定を意識してください。反動を使わず、ゆっくりとした動作を心がけましょう。
エクササイズ3: チューブを使った肩甲骨引き寄せ運動
この運動は、肩甲骨を安定させる筋肉を鍛え、肩関節の土台を強化することを目的としています。
- 準備: チューブの両端をそれぞれの手で持ちます。
- 姿勢: 腕を体の前に伸ばし、肘は軽く曲げても構いません。チューブが軽く張るくらいの距離で持ちます。
- 動作: 肩甲骨を背骨に引き寄せるように意識しながら、ゆっくりとチューブを左右に広げます。このとき、肩が上がらないように注意し、肩甲骨の動きに集中します。数秒間キープします。
- 戻し方: ゆっくりと元の位置に戻します。
- 回数: 10回を1セットとし、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 肩の力を抜き、肩甲骨の動きを意識することが重要です。痛みを感じたら無理せず中止してください。
3.1.2 タオルを使った肩甲骨安定化トレーニング
タオルは、肩甲骨周りの筋肉を意識し、インナーマッスルと連動して肩関節の安定性を高めるのに役立ちます。特別な道具は不要で、自宅で手軽に実践できます。タオルの軽い抵抗を利用して、肩甲骨の正しい動きを促しましょう。
エクササイズ1: タオル背中引き上げ運動
この運動は、肩甲骨を寄せる筋肉を活性化させ、肩甲骨の安定性と姿勢の改善を促します。
- 準備: フェイスタオルを1枚用意します。
- 姿勢: タオルの両端をそれぞれの手で持ち、背中に回します。両腕は自然に下ろし、リラックスした状態を保ちます。
- 動作: タオルがピンと張るように、両手をゆっくりと引き上げます。このとき、肩甲骨を背骨に引き寄せるように意識し、胸を張るような感覚で行います。痛みを感じる手前で止め、数秒間キープします。
- 戻し方: ゆっくりと元の位置に戻します。
- 回数: 10回を1セットとし、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 痛みがない範囲で行い、無理に高く上げようとしないでください。肩がすくまないように、肩甲骨の動きに集中しましょう。
エクササイズ2: タオル肩甲骨スライド
この運動は、肩甲骨を前後にスライドさせる筋肉を鍛え、肩甲骨の柔軟性と動きの質を高めます。
- 準備: フェイスタオルを広げ、両手で持ちます。肘は軽く曲げ、胸の前でタオルを構えます。
- 姿勢: 椅子に座るか、まっすぐに立ちます。
- 動作:
- まず、肩甲骨を背骨から離すように意識しながら、ゆっくりと腕を前に突き出します。タオルは常に軽く張った状態を保ちます。このとき、肩甲骨が前に滑り出すのを感じてください。
- 次に、肩甲骨を背骨に引き寄せるように意識しながら、ゆっくりと腕を後ろに引きます。このとき、肩甲骨が背骨に近づくのを感じてください。
- 回数: 前後に動かす動作を1回とし、10回を1セット、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 肩の力を抜いて、肩甲骨の動きに集中してください。無理な範囲で行わず、痛みのない範囲で滑らかな動きを心がけましょう。
3.2 肩の可動域を広げるアウターマッスル筋トレ
インナーマッスルで肩関節の安定性を高めたら、次は肩の大きな動きを担うアウターマッスルにアプローチし、可動域を広げていくことが重要です。五十肩では、肩を上げる、横に開くといった動作が制限されることが多いため、これらの動きを徐々に取り戻すことを目指します。痛みを避けながら、少しずつ動く範囲を広げていくようにしましょう。
3.2.1 壁を使った腕の上げ下げ運動
壁を使うことで、肩の屈曲(腕を前に上げる動き)と外転(腕を横に上げる動き)の可動域を、安全かつ無理なく広げることができます。壁がサポート役となり、自分の力だけでは難しい動きもスムーズに行いやすくなります。
エクササイズ1: 壁を伝う腕の屈曲
この運動は、腕を前に上げる動きの可動域を改善することを目的としています。
- 準備: 壁の前に立ちます。痛む側の手のひらを壁につけます。
- 姿勢: 体は壁から少し離し、リラックスした姿勢を保ちます。
- 動作: 指先で壁を伝いながら、ゆっくりと腕を上に滑らせていきます。痛みを感じる手前で動きを止め、数秒間その位置をキープします。
- 戻し方: ゆっくりと元の位置に戻します。
- 回数: 5~10回を1セットとし、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 壁に体重を預けすぎないように注意し、肩の力を抜いて行うことが重要です。無理に高く上げようとせず、痛みのない範囲で徐々に可動域を広げていきましょう。
エクササイズ2: 壁を伝う腕の外転
この運動は、腕を横に上げる動きの可動域を改善することを目的としています。
- 準備: 壁に対して横向きに立ちます。痛む側の手のひらを壁につけます。
- 姿勢: 体は壁から少し離し、姿勢をまっすぐに保ちます。
- 動作: 指先で壁を伝いながら、ゆっくりと腕を横に滑らせて上げていきます。痛みを感じる手前で動きを止め、数秒間その位置をキープします。
- 戻し方: ゆっくりと元の位置に戻します。
- 回数: 5~10回を1セットとし、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 体が壁に傾かないように、まっすぐな姿勢を保つことが大切です。痛みを感じたらすぐに中止し、無理のない範囲で行ってください。
3.2.2 ペットボトルを使った軽い負荷トレーニング
ペットボトルに水を入れることで、ごく軽い負荷をかけながら、肩のアウターマッスルの筋力維持と可動域改善を目指すことができます。重すぎる負荷は五十肩の症状を悪化させる可能性があるため、必ず500ml程度のペットボトルから始め、水の量で負荷を調整するようにしましょう。
エクササイズ1: ペットボトルを使った前方挙上
この運動は、腕を前に上げる筋肉(三角筋前部など)を鍛え、可動域を広げることを目的としています。
- 準備: 椅子に座り、500ml程度の水を入れたペットボトルを痛む側の手に持ちます。
- 姿勢: 背筋を伸ばし、リラックスした姿勢を保ちます。
- 動作: ペットボトルを持った腕を、体の前にゆっくりと上げていきます。肩の高さまで上げたら、数秒間キープし、ゆっくりと元の位置に戻します。
- 回数: 10回を1セットとし、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 肘を伸ばしすぎず、肩に痛みを感じない範囲で行ってください。反動を使わず、コントロールされた動きを心がけましょう。
エクササイズ2: ペットボトルを使った側方挙上
この運動は、腕を横に上げる筋肉(三角筋中部など)を鍛え、可動域を広げることを目的としています。
- 準備: 椅子に座り、500ml程度の水を入れたペットボトルを痛む側の手に持ちます。
- 姿勢: 背筋を伸ばし、リラックスした姿勢を保ちます。
- 動作: ペットボトルを持った腕を、体の横にゆっくりと上げていきます。肩の高さまで上げたら、数秒間キープし、ゆっくりと元の位置に戻します。
- 回数: 10回を1セットとし、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 肩がすくまないように注意し、肩甲骨の安定を意識してください。痛みを感じたらすぐに中止しましょう。
エクササイズ3: ペットボトルを使った肩甲骨周りの強化
この運動は、肩甲骨を安定させる筋肉(僧帽筋下部など)を鍛え、肩関節の負担軽減を目指します。
- 準備: うつ伏せに寝て、腕を前に伸ばし、500ml程度の水を入れたペットボトルを手に持ちます。
- 姿勢: 首はリラックスさせ、顔は横向きにしても良いでしょう。
- 動作: 肩甲骨を背骨に寄せるように意識しながら、ゆっくりと腕を床から少し持ち上げます。無理に高く上げようとせず、肩甲骨の動きを感じることが重要です。数秒間キープし、ゆっくりと元の位置に戻します。
- 回数: 10回を1セットとし、2~3セットを目安に行います。
- 注意点: 首や背中に負担がかからないように、無理のない範囲で行ってください。痛みを感じたらすぐに中止しましょう。
3.3 自宅でできる全身連動型筋トレ
五十肩は、肩単独の問題として捉えられがちですが、実際には姿勢や体幹、そして全身のバランスが深く関わっていることが多いです。肩甲骨周りの動きを改善し、体全体の連動性を高めることで、肩への負担を軽減し、より根本的な改善を目指すことができます。ここでは、特別な道具を使わずに自宅で手軽にできる体操をご紹介します。
3.3.1 肩甲骨周りを意識した簡単な体操
肩甲骨は「天使の羽」とも呼ばれ、肩関節の土台として非常に重要な役割を担っています。肩甲骨の動きをスムーズにし、猫背などの不良姿勢を改善することで、肩関節への負担を減らし、肩の動きをより楽にすることができます。
体操1: 肩甲骨回し
この体操は、肩甲骨周りの筋肉をほぐし、血行を促進することで、肩の動きをスムーズにすることを目的としています。
- 準備: 椅子に座るか、まっすぐに立ちます。
- 姿勢: リラックスした姿勢を保ちます。
- 動作:
- まず、両肩を耳に近づけるようにゆっくりと上げます。
- 次に、大きく後ろに回すように意識しながら、ゆっくりと下ろします。このとき、肩甲骨が大きく動くことを意識してください。
- 前回しと後ろ回しをそれぞれ行います。
- 回数: 前回し、後ろ回しをそれぞれ5~10回ずつ行います。
- 注意点: 呼吸を止めず、リラックスして行いましょう。痛みを感じたら無理せず中止してください。
体操2: 胸を開く体操
この体操は、胸郭を広げ、猫背によって硬くなった胸の筋肉を伸ばすことで、肩甲骨の動きを改善し、正しい姿勢を促します。
- 準備: 椅子に座ります。
- 姿勢: 背筋を伸ばし、両手を頭の後ろで軽く組みます。
- 動作: 肘を大きく開き、胸を張るように意識しながら、ゆっくりと上体を反らせます。このとき、肩甲骨が背骨に寄るのを感じてください。数秒間キープします。
- 戻し方: ゆっくりと元の位置に戻します。
- 回数: 5~10回を目安に行います。
- 注意点: 腰を反りすぎないように注意し、胸郭の広がりを意識して行いましょう。痛みを感じたら無理せず中止してください。
体操3: 背中と肩甲骨のストレッチ(猫と牛のポーズ)
この体操は、背骨と肩甲骨の連動性を高め、体幹の柔軟性を向上させることで、肩関節への負担を軽減します。ヨガのポーズとしても知られています。
- 準備: 床に四つん這いになります。両手は肩幅に、膝は腰幅に開いて床につけます。
- 姿勢: 手のひらでしっかりと床を押し、背筋を伸ばします。
- 動作:
- 息を吐きながら、ゆっくりと背中を丸め、おへそを覗き込むようにします(猫のポーズ)。このとき、肩甲骨が左右に広がるのを感じてください。
- 次に、息を吸いながら、ゆっくりと背中を反らせ、天井を見上げるようにします(牛のポーズ)。このとき、肩甲骨が背骨に寄るのを感じてください。
- 回数: 5~10回を目安に行います。
- 注意点: 首に負担がかからないように、ゆっくりと丁寧に行いましょう。呼吸と動作を連動させることが重要です。痛みを感じたら無理せず中止してください。
4. 筋トレと合わせて行いたい五十肩ケア
五十肩の改善には、筋トレによる筋肉の強化や可動域の拡大が非常に重要ですが、それだけでは十分ではありません。痛みを和らげ、炎症を管理し、組織の回復を促すための補完的なケアも同時に行うことが、より効果的な回復への近道となります。ここでは、筋トレと並行して実践したい、痛みのケアと回復をサポートする具体的な方法をご紹介します。
4.1 痛みを和らげるストレッチの種類
五十肩の痛みがある時期にストレッチを行う際は、絶対に無理をせず、痛みのない範囲でゆっくりと行うことが最も重要です。無理なストレッチはかえって症状を悪化させる可能性がありますので、ご自身の体の状態と相談しながら慎重に進めてください。また、温熱療法などで肩を温めてから行うと、筋肉がほぐれやすくなり、より効果的です。
4.1.1 チューブを使った回旋筋腱板エクササイズ
この章では「痛みを和らげるストレッチの種類」として具体的なストレッチを紹介します。筋トレの章で「チューブを使った回旋筋腱板エクササイズ」が紹介されているため、ここではストレッチとしての側面を強調し、痛みの緩和に焦点を当てた動きを提案します。
回旋筋腱板のストレッチは、肩の深層にある小さな筋肉群の柔軟性を高め、関節の動きをスムーズにすることを目指します。特に、肩関節の安定性に関わるこれらの筋肉が硬くなると、可動域が制限され、痛みが生じやすくなります。
実践方法
- まず、軽い負荷のトレーニングチューブを用意します。
- チューブの片端をドアノブなどに固定し、もう一方の端を患側の手で握ります。
- 脇を軽く締め、肘を90度に曲げた状態から始めます。
- ゆっくりとチューブを外側に引っ張り、肩を外旋させます。この時、肩甲骨が動かないように注意し、肩関節のみを意識して動かすことがポイントです。
- 痛みを感じる手前で止め、数秒間キープします。
- ゆっくりと元の位置に戻します。
- 同様に、チューブを内側に引っ張る動き(内旋)も行います。チューブをドアノブと反対側に固定するか、体の向きを変えて行います。
注意点
- 動作中は、肩に痛みを感じたらすぐに中止してください。
- 反動をつけず、ゆっくりとした動きを心がけましょう。
- 回数は、無理のない範囲で10回程度を目標に、1~2セットから始めてください。
- このストレッチは、肩の可動域を広げるとともに、インナーマッスルの柔軟性を高める効果が期待できます。
4.1.2 タオルを使った肩甲骨安定化トレーニング
ここでは、筋トレの章で紹介された「タオルを使った肩甲骨安定化トレーニング」を、痛みを和らげるストレッチとして再解釈し、肩甲骨周りの柔軟性向上と緊張緩和に焦点を当てて説明します。
肩甲骨の動きが悪いと、肩関節に余計な負担がかかり、痛みの原因となることがあります。タオルを使ったストレッチは、肩甲骨周りの筋肉を優しく伸ばし、肩甲骨の動きを滑らかにすることで、肩関節への負担を軽減し、痛みの緩和を目指します。
実践方法
- フェイスタオルを一枚用意します。
- タオルの両端を両手で持ち、腕を肩幅程度に開きます。
- 肩の高さでタオルをピンと張った状態を保ちます。
- ゆっくりと息を吐きながら、タオルを頭上へ持ち上げていきます。この時、肩甲骨が上方にスライドするのを意識してください。
- 痛みを感じる手前で止め、数秒間キープします。
- ゆっくりと息を吸いながら、元の位置に戻します。
- 次に、タオルを背中側に回し、両手でタオルの両端を持ちます。
- ゆっくりと息を吐きながら、タオルを上方に引き上げ、肩甲骨を寄せるように意識します。
- 痛みを感じる手前で止め、数秒間キープし、ゆっくりと戻します。
注意点
- タオルを無理に引っ張ったり、反動をつけたりしないでください。
- 肩や首に痛みを感じたら、すぐに中止しましょう。
- 特に背中側への動きは、五十肩の症状によっては難しい場合がありますので、無理は禁物です。
- このストレッチは、肩甲骨の柔軟性を高め、肩甲骨と腕の連動性を改善することで、肩関節の負担を軽減し、痛みの緩和に貢献します。
4.1.3 その他の痛みを和らげるストレッチ
五十肩の痛みを和らげるためには、上記以外にも様々なストレッチが有効です。ここでは、痛みの段階やご自身の状態に合わせて取り入れやすい、代表的なストレッチをいくつかご紹介します。
ストレッチ名 | 目的 | 実践方法 | 注意点 |
---|---|---|---|
振り子運動(コッドマン体操) | 肩関節の摩擦軽減、可動域の改善 | 前かがみになり、患側の腕をだらりと垂らします。そのまま、重力に任せて腕を前後、左右、円を描くようにゆっくりと揺らします。 | 腕の力は完全に抜き、反動をつけないでください。痛みを感じない範囲で行いましょう。 |
壁を使った指のぼり運動 | 肩の屈曲可動域の拡大 | 壁の前に立ち、患側の手の指を壁に這わせるようにして、ゆっくりと腕を上げていきます。痛みを感じる手前で止め、無理はしないでください。 | 体幹が反ったり、肩がすくんだりしないように注意します。指で壁を「歩く」ように、ゆっくりと動かすことがポイントです。 |
胸部のストレッチ | 大胸筋の柔軟性向上、肩関節への負担軽減 | ドアの枠に片手をつき、体を少し前方にひねるようにして、胸の筋肉を伸ばします。または、両手を組んで背中側に伸ばし、胸を開くようにします。 | 肩に痛みを感じない範囲で行い、特に肩関節に負担がかからないように注意します。 |
これらのストレッチは、痛みの緩和と肩関節の柔軟性向上に役立ちます。いずれのストレッチも、呼吸を止めずに、ゆっくりと深呼吸しながら行うと、よりリラックスして効果を高めることができます。毎日少しずつでも継続することが大切です。
4.2 温熱療法とクールダウンの重要性
五十肩のケアでは、筋トレやストレッチと並行して、温熱療法とクールダウン(冷却療法)を適切に使い分けることが、痛みの管理と回復促進に大きく貢献します。それぞれの療法が持つ効果を理解し、症状の段階や目的に合わせて活用しましょう。
4.2.1 温熱療法で血行促進と筋肉の緩和
温熱療法は、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。特に、五十肩の慢性期や、筋トレ・ストレッチを行う前に肩周りを温めることで、筋肉がほぐれやすくなり、より安全かつ効果的に運動に取り組むことができます。
温熱療法の効果
- 血行促進: 温めることで血管が拡張し、血流が改善されます。これにより、疲労物質の除去が促され、筋肉への酸素や栄養の供給が増加します。
- 筋肉の弛緩: 温熱は筋肉の緊張を和らげ、柔軟性を高めます。硬くなった筋肉がほぐれることで、可動域が広がりやすくなります。
- 痛みの緩和: 温熱刺激は神経の興奮を鎮め、痛みの感覚を和らげる効果があります。また、血行改善により、痛みの原因となる物質の排出も促されます。
実践方法
- 蒸しタオル: 濡らしたタオルを電子レンジで温めるか、熱いお湯に浸して絞り、肩に当てます。やけどに注意し、適度な温度に冷ましてから使用してください。
- 入浴: ぬるめのお湯にゆっくりと浸かり、肩まで温めることで全身の血行が促進されます。湯船の中で肩を軽く動かすのも良いでしょう。
- 温湿布: 市販の温湿布も手軽に利用できます。長時間貼る場合は、肌への刺激に注意してください。
- カイロ: 直接肌に貼らず、衣類の上から使用し、低温やけどに注意しながら利用します。
注意点
- 炎症が強く、熱感がある急性期には温熱療法は避けてください。炎症を悪化させる可能性があります。
- やけどを防ぐため、必ず適度な温度で使用し、長時間同じ場所に当て続けないように注意しましょう。
- 皮膚に異常がある場合や、持病がある場合は、専門家にご相談ください。
4.2.2 クールダウンで炎症抑制と痛みの軽減
クールダウン(冷却療法)は、主に炎症を抑え、痛みを軽減する目的で行われます。特に、五十肩の初期段階で強い痛みや熱感がある場合、あるいは筋トレや運動後に肩に炎症や熱感が生じた場合に有効です。
クールダウンの効果
- 炎症の抑制: 冷却することで血管が収縮し、炎症部位への血流が減少します。これにより、炎症の拡大を防ぎ、腫れや熱感を抑える効果があります。
- 痛みの軽減: 冷却は神経の伝達速度を遅らせ、痛みの感覚を麻痺させる効果があります。また、炎症が抑えられることで、痛み自体も和らぎます。
- 組織の損傷軽減: 炎症を早期に抑えることで、組織への二次的な損傷を防ぎ、回復を早めることにつながります。
実践方法
- 氷嚢(ひょうのう): 氷をビニール袋や専用の氷嚢に入れ、タオルで包んで肩に当てます。直接肌に当てると凍傷の危険があるため、必ずタオルなどで保護してください。
- 冷湿布: 市販の冷湿布は手軽に利用できます。ただし、冷却効果は氷嚢に比べて穏やかです。
- 冷却スプレー: スポーツなどで一時的に痛みを和らげたい場合に用いられますが、五十肩の日常的なケアとしては、氷嚢や冷湿布の方が適しています。
注意点
- 冷却時間は15~20分程度を目安とし、長時間冷やしすぎないように注意してください。凍傷のリスクがあります。
- 冷却中は、皮膚の色や感覚に異常がないか確認しましょう。
- 冷却後に皮膚が赤くなるのは正常な反応ですが、しびれや痛みが増す場合は中止してください。
- 冷却療法は、あくまで一時的な症状の緩和を目的とするものです。根本的な改善には、筋トレやストレッチ、適切な生活習慣が不可欠です。
温熱療法とクールダウンの使い分け
五十肩の症状は、時期によって変化します。急性期で強い痛みや熱感がある場合はクールダウンを中心に、慢性期で痛みが落ち着き、肩の動きが硬くなっている場合は温熱療法が適しています。また、筋トレや運動の前後には、温熱療法で筋肉をほぐし、運動後に熱感や痛みがある場合はクールダウンを行うなど、状況に応じて使い分けることが大切です。
どちらの療法も、ご自身の体の反応をよく観察しながら、無理なく継続することが回復への鍵となります。迷った場合は、専門家のアドバイスを求めることをおすすめします。
5. 五十肩の再発予防と継続のコツ
五十肩の症状が和らぎ、肩の動きが改善されてきたとしても、安心はできません。一度五十肩を経験すると、再び肩に負担がかかることで症状がぶり返す、いわゆる再発のリスクが常に伴います。せっかく努力して筋トレを続けて改善した肩の調子を維持し、再び痛みに悩まされることのないよう、日々の生活習慣を見直すこと、そして筋トレを継続するための工夫を知ることが非常に重要です。ここでは、五十肩の再発を防ぎ、健康な肩を保ち続けるための具体的なポイントと、筋トレを長く続けるための秘訣について詳しくご紹介します。
5.1 日常生活で気をつけたい姿勢と動作
五十肩の症状は、日々の何気ない姿勢や動作の積み重ねによって悪化したり、再発したりすることが少なくありません。肩関節に過度な負担をかけないよう、意識的に生活習慣を見直すことが、再発予防の最も大切な一歩となります。
5.1.1 正しい姿勢の維持
長時間同じ姿勢でいることは、肩周りの筋肉を硬直させ、血行不良を招きやすくなります。特に、猫背や前かがみの姿勢は、肩甲骨の動きを制限し、肩関節に不必要な負荷をかけます。常に正しい姿勢を意識することで、肩への負担を軽減し、筋肉のバランスを整えることができます。
状況 | 意識するポイント |
---|---|
座る時 | 骨盤を立て、背筋を伸ばすことを意識してください。椅子に深く腰掛け、背もたれに寄りかかりすぎないようにしましょう。デスクワークでは、モニターの位置を目の高さに合わせ、キーボードやマウスを使う際に肩が上がらないように肘を90度程度に保つと良いでしょう。足の裏は床にしっかりとつけ、膝が股関節よりも少し高くなるように調整すると、骨盤が安定しやすくなります。定期的に立ち上がって体を動かすことも大切です。 |
立つ時 | 重心を両足に均等に乗せ、肩の力を抜いて、耳、肩、股関節、くるぶしが一直線になるようなイメージで立ちます。体幹を意識し、お腹を軽く引き締めることで、全身のバランスが安定しやすくなります。胸を張りすぎず、自然なS字カーブを保つことが理想的です。長時間立ち続ける場合は、片足ずつ重心を移動させたり、足踏みをしたりして、同じ筋肉に負担がかかり続けないように工夫してください。 |
寝る時 | 横向きで寝る際は、下になっている肩に体重がかかりすぎないように、抱き枕などを利用して体の重みを分散させることが有効です。抱き枕を抱えることで、腕の位置が安定し、肩関節への圧迫を軽減できます。また、仰向けで寝る場合は、枕の高さが適切であるかを確認し、首や肩に負担がかからないように調整してください。高すぎる枕や低すぎる枕は、首のカーブを不自然にし、肩周りの筋肉を緊張させる原因となります。寝返りを打ちやすい環境を整えることも大切です。 |
5.1.2 日常動作の見直し
腕を無理に上げる、重いものを片手で持つなど、特定の動作は肩に大きな負担をかけます。これらの動作を意識的に変えることで、肩へのストレスを軽減し、再発を防ぐことができます。日々の生活の中で、無意識に行っている動作を見直し、肩に優しい動き方を身につけましょう。
動作 | 工夫するポイント |
---|---|
物を持ち上げる時 | 重い物を持ち上げる際は、膝を曲げて腰を落とし、体全体を使って持ち上げるようにしてください。腕の力だけでなく、脚や体幹の筋肉を使うことで、肩への負担を大幅に減らせます。物を持ち上げる前に、一度肩の力を抜いてリラックスすることも大切です。また、片手で無理に持たず、両手でバランス良く持つことを心がけましょう。買い物袋なども、片方の肩に集中させず、両手に均等に持つか、リュックサックを利用するなどして分散させるのが良い方法です。 |
高い所の物を取る時 | 無理に腕を伸ばすのではなく、踏み台や椅子を利用して、肩を必要以上に上げないようにしましょう。腕を上げる際は、肘を軽く曲げ、肩甲骨から動かすような意識を持つと良いです。真上に腕を伸ばす動作は、肩関節に大きなストレスを与えやすいので、できるだけ避けるか、慎重に行ってください。棚の整理をする際も、一度に全てを行おうとせず、こまめに休憩を挟みながら行うことが賢明です。 |
家事を行う時 | 掃除機をかける際は、腕だけでなく体全体を使って動かすようにし、同じ姿勢が長く続かないように休憩を挟んでください。料理中は、シンクや作業台の高さが適切であるかを確認し、前かがみになりすぎないように注意しましょう。必要であれば、足元に踏み台を置くなどして、姿勢を調整するのも有効です。洗濯物を干す際も、無理な姿勢で腕を上げ続けることを避け、肩に負担がかからないように工夫してください。例えば、洗濯物のカゴを高い位置に置く、低い位置から干せるように工夫するなどです。 |
スマートフォンやパソコンの使用 | 長時間スマートフォンを覗き込んだり、パソコン作業で首が前に突き出たりする姿勢は、首や肩に大きな負担をかけます。定期的に休憩を取り、首や肩のストレッチを行うとともに、目線を高く保つように心がけてください。スマートフォンの画面は目の高さに持ち上げ、パソコンのモニターも目線が自然と水平になるように調整しましょう。1時間に一度は席を立ち、軽く体を動かす習慣をつけることが、肩や首の凝りを防ぐ上で非常に効果的です。 |
これらの意識的な改善は、日々の生活の中で少しずつ習慣化していくことが重要です。一度に全てを変えようとするのではなく、できることから一つずつ取り組んでみてください。小さな変化の積み重ねが、肩の健康を長く維持するための大きな力となります。
5.2 筋トレを継続するためのモチベーション維持
五十肩の改善には、継続的な筋トレが不可欠です。しかし、忙しい日々の中で筋トレを続けることは、時に難しいと感じるかもしれません。せっかく始めた筋トレも、途中で挫折してしまっては意味がありません。ここでは、モチベーションを高く保ち、筋トレを習慣化するための具体的なコツをご紹介します。筋トレを「やらなければならないこと」ではなく、「やりたいこと」に変える工夫を見つけましょう。
5.2.1 明確な目標設定と進捗の可視化
漠然と「筋トレを頑張る」だけでは、モチベーションを維持しにくいものです。具体的な目標を設定し、その達成度を記録することで、筋トレの継続に繋がりやすくなります。目標が明確であればあるほど、人は行動を起こしやすくなります。
ポイント | 具体的な実践例 |
---|---|
目標設定 | 「〇週間後に、腕を△度まで上げられるようになる」「〇か月後には、痛みなく肩の荷物を持ち上げられるようになる」など、具体的で達成可能な目標を設定してください。例えば、「朝の着替えで、痛みなく服を羽織れるようになる」といった、日常生活に密着した目標も効果的です。目標は、少し頑張れば届くような、現実的なものにすることが大切です。 |
記録の活用 | 筋トレを行った日、エクササイズの種類、回数、セット数、そしてその日の肩の状態や可動域の変化などを記録しましょう。手帳やスマートフォンアプリなどを活用すると便利です。記録を振り返ることで、自身の成長を実感し、次への意欲が湧いてきます。特に、痛みの度合いや可動域の改善を数値や簡単なメモで残しておくと、過去の自分との比較ができ、大きな達成感に繋がります。 |
5.2.2 筋トレを習慣化する工夫
筋トレを歯磨きやお風呂のように、生活の一部として自然に行えるようになれば、継続はぐっと楽になります。習慣化には、環境を整えたり、行動のきっかけを作ったりすることが有効です。
工夫 | 実践例 |
---|---|
時間帯の固定 | 「毎朝起きてすぐ」「夕食後」「お風呂に入る前」など、筋トレを行う時間を決めて、その時間になったら自然と体が動くように習慣づけてください。特定の行動と筋トレを結びつけることで、忘れにくくなります。例えば、「コーヒーを淹れたら筋トレ」のように、既存の習慣に組み込むのも良い方法です。 |
環境整備 | 筋トレに必要なチューブやタオルなどをすぐに手に取れる場所に置いておくと、始めるまでの手間が減り、億劫になりにくくなります。筋トレをするスペースを確保し、快適な環境を整えることも大切です。例えば、テレビを見ながらできるような場所を選んだり、静かで集中できる空間を用意したりするのも良いでしょう。 |
小さな成功体験 | 「今日は1回でも多くできた」「昨日より少しだけ長く続けられた」など、日々の小さな進歩に目を向け、自分自身を褒めてあげましょう。大きな目標達成だけでなく、日々の小さな達成感を積み重ねることが、モチベーション維持の源となります。家族や友人に今日の筋トレについて話すのも、良い刺激になることがあります。 |
5.2.3 楽しさを見つける、変化を実感する
筋トレを単なる義務と捉えるのではなく、楽しさを見つけることや、自身の体の変化を実感することは、モチベーション維持に大きく貢献します。ポジティブな感情は、継続の強力な味方です。
モチベーション維持のヒント | 具体的な方法 |
---|---|
好きなものと組み合わせる | 好きな音楽を聴きながら筋トレをしたり、お気に入りのウェアを着て気分を上げたりするなど、自分にとって心地よい環境を整えましょう。また、テレビ番組やラジオを聴きながら行うなど、他の活動と組み合わせることで、筋トレの時間をより有意義に感じることができます。無理なく続けられるような、自分なりの「ご褒美」を設定するのも良いでしょう。 |
体の変化を実感する | 筋トレを続けることで、肩の痛みが軽減したり、腕の可動域が広がったりするといった具体的な変化を実感できるはずです。これらの変化を意識的に捉えることで、「もっと頑張ろう」という気持ちが湧いてきます。鏡で姿勢の変化を確認したり、以前はできなかった動作ができるようになったことを喜びとして感じたりすることも大切です。自身の体が少しずつ変化していく過程を楽しむ視点を持つことが、継続の鍵となります。 |
適度な休息とご褒美 | 無理は禁物です。体が疲れていると感じたら、無理せず休息を取りましょう。オーバーワークは怪我の原因となり、モチベーションの低下にも繋がります。また、目標を達成した際には、自分にご褒美をあげることもモチベーション維持に繋がります。美味しい食事や趣味の時間、リラックスできる入浴剤など、ささやかな喜びを用意してください。頑張った自分を労わることで、次への活力が生まれます。 |
五十肩の改善は一朝一夕にはいきません。焦らず、ご自身のペースで、楽しみながら筋トレを継続していくことが、再発予防への最も確実な道となります。日々の小さな努力が、未来の健康な肩へと繋がっていくことを信じて、前向きに取り組んでいきましょう。
6. まとめ
五十肩の症状改善には、適切な筋トレが非常に効果的であることをご紹介しました。インナーマッスルやアウターマッスルを鍛えるエクササイズ、そして全身連動型のトレーニングは、自宅でも無理なく実践できます。正しいフォームと継続が重要であり、ストレッチや温熱療法、日常生活での姿勢改善も併せて行うことで、早期回復と再発予防につながります。ご自身のペースで取り組み、痛みが増す場合や改善が見られない場合は、専門家へ相談してください。何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。